新着情報[生命環境化学科]久保裕也准教授が4件の特許権を取得

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2022.01.25
【特許番号】第6943409号  【登録日】令和3年9月13日
【発明の名称】電炉ダストの処理方法

工学部生命環境化学科 久保准教授、本田諒芽さん(久保研・2020年卒)、原宏志さん(久保研・2020年卒)が発明し、特許出願した「電炉ダストの処理方法」に関する技術発明が特許権を取得しました。

< 本特許発明の要約 >
従来より、電炉ダストから亜鉛を回収する中間処理方法としては、乾式法と湿式法が提案されています。前者は、電炉ダストにコークス等の還元剤を添加し、高温下で還元して亜鉛を金属蒸気として除去、回収する方法ですが、高温還元装置等の大がかりな設備を要し、また高温で加熱・還元するため、処理工程で消費するエネルギーも大きくなります。後者は、アルカリ、塩化アンモニウム等の水溶液によって電炉ダストから亜鉛を浸出して回収する方法が一般的ですが、亜鉛の回収率が60%程度に留まります。そのため、発生した電炉ダストの全量処理は難しく、一定量が化学処理を施した上で埋立て処分等されているのが実情です。 本発明の電炉ダストの処理方法は、亜鉛、及び鉄を含む電炉ダストに反応剤である粉末状の塩化アンモニウムを混合して混合物を生成する工程と、前記混合物を所定の加熱条件で反応させ、易溶解性の反応生成物を生成する工程と、を備えています。 ここで、亜鉛、及び鉄を含む電炉ダストに反応剤を混合した混合物を所定の加熱条件で反応させ、易溶解性の反応生成物を生成する工程を備えることにより、電炉ダストに含まれる亜鉛の一形態であって、特に難溶解性の化合物であるジンクフェライトをはじめとした、各成分を、塩化アンモニウムとの反応により易溶解性の化合物とすることができます。反応剤である粉末状の塩化アンモニウムは、加熱すると熱分解してアンモニウムガスと塩化水素ガスが生成されます(NH4Cl→HCl+NH3)。沸点の低い塩酸水溶液を反応剤とする従来の浸出処理に比べ、電炉ダストに含まれる様々な金属成分は塩化アンモニウムと迅速に反応し、難溶解性のジンクフェライトについても易溶解性の塩に変換することができます。反応により得られた反応生成物については、電解法や溶媒抽出法等を用いて処理することで、反応生成物から亜鉛成分を回収することが見込まれます。

【特許番号】第6961275号  【登録日】令和3年10月15日
【発明の名称】クロム回収方法

工学部生命環境化学科 久保准教授が発明し、特許出願した「クロム回収方法」に関する技術発明が特許権を取得しました。

< 本特許発明の要約 >
ステンレス鋼の製造工程で発生するスラグは、ステンレス粒子(Fe-Cr合金)、及びクロム濃縮相が含まれた酸化物の混合物ですが、その用途が乏しく、現状は大量のステンレススラグが廃棄物として埋め立て処分されています。クロム含有スラグからクロムを回収する方法として、クロム含有スラグを還元してクロムを回収することが行われています。しかしながら、従来の回収方法では、比重差を用いた選別を行うために、被粉砕物を200μm未満のオーダーの粒径となるまで粉砕し単体粒子化しているため、粉砕機に過度な負担がかかるとともに、粉砕のために非常に大きなエネルギーが必要となります。従って、繰り返し使用による装置のメンテナンスコスト、或いは装置の駆動コストが高くなるため、回収効率が悪化することが懸念されます。
本発明のクロム回収方法は、酸化クロム成分が1.0重量%以上で酸化鉄成分が2.0重量%以上であるステンレススラグを電圧印加用の液体に浸漬して一対の電極間に設置する工程と、前記電極間に所定電圧のパルス電圧を印加して前記ステンレススラグを粉砕する工程と、前記ステンレススラグを粉砕して得られる粉砕物から、所定濃度以上のクロムを含有する粉砕物を選別する工程とを備えています。 ここで、所定の物性からなるステンレススラグを電圧印加用の液体に浸漬して一対の電極間に設置する工程を備えることにより、電極間に所定電圧のパルス電圧を印加することで液体中、及び被粉砕物(ステンレススラグ)内に放電を起こすことができます。

図1 本発明の工程図

このとき、液体中で起こる放電により液体が気化膨張し衝撃波が生成され、被粉砕物内には被粉砕物を構成する異なる相の境界面に優先的に電流が流れます。これら液体中の衝撃波と被粉砕物内を流れる電流により、被粉砕物を粉砕して単体粒子に単離することができます。 本発明により、ステンレス鋼の製鋼工程で発生したスラグから、省エネルギーで効率的にクロムを回収することが可能になります。

図2 粉砕した単体粒子の外観写真

【特許番号】第6962536号  【登録日】令和3年10月18日
【発明の名称】製鋼スラグの処理方法

工学部生命環境化学科の久保准教授、鶴裕功さん(生命環境化学科4年・久保研)、吉田拓矢さん(生命環境化学科4年・久保研)が発明し、特許出願した「製鋼スラグの処理方法」に関する技術発明が特許権を取得しました。

< 本特許発明の要約 >
リンは食糧生産、工業プロセスで必須の元素ですが、その原料であるリン鉱石は産出地が限定的であり、世界的にも戦略資源に指定されています。そして我が国においては、主なリンの産出国である中国やモロッコからの輸入に頼っているのが現状であり、近年では人口増大に伴うリン資源の枯渇の可能性も指摘がされています。 これまで製鋼スラグに含まれるリンを回収する手法は多数報告されており、水溶液浸出(硝酸、有機酸、炭酸水など)、高温還元によるリンの気化分離、粉砕・磁気分離によるリン濃縮相の分離といった研究がされてきました。しかしながら、硝酸等をはじめとする水溶液を用いてリンを抽出する場合、スラグ粉末全量をそのまま処理すると、高価な酸水溶液の消費量、廃液量が多くなるため処理コストが高くなるという問題があります。
本発明の製鋼スラグの処理方法は、アンモニアガス、及び塩化水素ガスを含む混合ガスを雰囲気ガスとして、製鋼スラグを揮発物と反応生成物とに分離する工程を備えています。製鋼スラグを、アンモニアガスと塩化水素ガスとを含む混合ガスを雰囲気ガスとして反応させることで、製鋼スラグに含まれる成分のうち、リン濃縮相以外の酸化物が混合ガスと選択的に反応して塩化物に変化します。生成された塩化物は易溶解性、低温揮発性のため、水溶液浸出、及び揮発により除去することが可能であり、製鋼スラグを構成する成分のうち、リン濃縮相のみを効率的に回収することが可能となります。

また、製鋼スラグを揮発物と反応生成物とに分離する工程は、製鋼スラグに粉末状の塩化アンモニウムを混合して混合物を生成する工程と混合物を所定の温度で加熱する工程とを有する場合には、熱分解で発生する塩化水素ガスの温度は300℃以上となり高い反応活性があるため、製鋼スラグに含まれる酸化物のうち鉄成分が低温揮発性の塩化物(沸点略300℃)となって揮発し、その他の成分は塩化アンモニウムと迅速に反応し、易溶解性の塩化物に変化させることができます。 本発明により、低コストかつ簡易な方法により製鋼スラグに含まれるリンを効率的に回収することが可能となります。

図1 本発明の工程図

図2 本発明の試験方法の概略図

図3 工程3の外観写真
【特許番号】第6987419号  【登録日】令和3年12月3日
【発明の名称】製鋼方法

工学部生命環境化学科の久保准教授が発明し、特許出願した「製鋼方法」に関する技術発明が特許権を取得しました。

< 本特許発明の要約 >
従来、鉄鋼の製造は、鉄鉱石を原材料として高炉、転炉を使用する方法、或いは鉄くずなどスクラップを原材料とする電気炉による方法があります。このうち我が国においては、高炉、転炉による鉄鋼の生産量が全体の約7割を占めています。この高炉、転炉を用いた製鋼方法では、炭素を大量に含むコークスを必要とすることから、一酸化炭素や二酸化炭素の発生量が大きくなります。鉄鋼生産に伴って排出される二酸化炭素は地球温暖化の原因にもなるため、鉄鋼生産におけるエネルギーの低減、及び二酸化炭素排出量の削減は鉄鋼業界において喫緊の課題となっています。 本発明は、以上の点に鑑みて創案されたもので、省エネルギーかつ簡易な方法により、鉄鉱石から鉄鋼を効率的に製造することができる製鋼方法に係るものです。本発明の製鋼方法は、アンモニアガス、及び塩化水素ガスを含む混合ガスを雰囲気ガスとして、鉄鉱石を揮発物と反応生成物とに分離する工程を備えています。

アンモニアガスと塩化水素ガスとを含む混合ガスを雰囲気ガスとして鉄鉱石と反応させることで、鉄鉱石に含まれる一部の成分(例えば鉄、マグネシウム、マンガン)は混合ガスと選択的に反応して塩になり、それ以外の成分(例えばアルミナ、二酸化ケイ素、リン)は反応せずに酸化物の状態が維持されます。このうち、混合ガスとの反応により生成された塩化物は低温揮発性、易溶解性のため、揮発、及び水溶液浸出により鉄鉱石に含まれる各成分を選択分離することが可能となります。
即ち、鉄鉱石と混合ガスとの反応により、鉄鉱石を構成する成分から鉄のみを選択的に低温で揮発させ、純度の高い鉄を揮発物として効率的に回収することができます。従って、従前の製鋼工程のように、融点降下による鉄鉱石の溶融、或いは溶銑からの不純物を除去する目的で使用する副原料である石灰(CaO)の使用量を大幅に削減することができるため、製鋼工程を簡素化することができるとともに、製鋼工程で発生する二酸化炭素の排出量を大幅に低減することが可能となります。

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